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日本のオヤジは北京ダックが好きだ。
なぜなら、北京ダックは中国料理の頂点に君臨する料理だと信じているから。
なぜなら、北京ダックは皮を食べたら残りは全部捨ててしまう贅沢な料理だから。
私は、北京ダックが好きではない。
なぜなら、そんなに美味しいものだとは思わないから。
なぜなら、中国料理には北京ダックよりも美味しいものがいくらでもあると信じ
ているから
さて、北京ダックは本当に『皮だけを食べたら残りは全部捨ててしまう贅沢な料理』
なのか？
食べることに情熱を燃やす中国人がはたしてそんなにもったいないことをするのだ
ろうか？
答えは、｢不是（いいえ）｣だ。
皮を削ぎ取ったあとの肉は「炒め物」として、時にはレタスが添えられて「レタス包み」として。骨はスープのだしとして重要な役割を担って、テーブルに登場するのだ。
北京ダックは、皮・肉・骨を無駄にすることなく利用できる大変経済的な材料なのだ。私はこの骨でとったスープが好きだ。このスープのためなら、好きでもない”皮”を食べてもいいとさえ思っている。
私が横濱中華街で北京ダックを食べたことがあるのは、香港路の『揚州酒家』だけである。この店では、北京ダックの皮・肉・骨を使った料理をセットメニューにしている。北京ダック半羽（２〜４人が目安）で４，５００円（'97.5.10現在）。１人で食べようが４人で食べようが４，５００円。安すぎ！味の方だって悪くない。皮は好きではないので、どうのこうの言わないが、スープの味はなかなかのものだ。決して絶品というわけではないが、素直に美味しいと言ってしまう。
他の店ではどうだろう？北京ダックを扱う店なら、メニューに載っていなくても肉を炒めたり、骨でスープをとってくれたりするものだ。これができないか、断る店は「北京ダックの扱いに関してはモグリ」のレッテルを貼ってあげよう。
店に入る前に、そういう料理ができるかを確認してから入店しよう。また、値段も事前に確認することだ。『揚州酒家』のように４人で食べても４，５００円というわけにはいかないから、それなりの予算を準備していきたいものだ。
そういえば、『揚州酒家』の近くに、とんでもない行列ができる店がある。こんなところで1時間も２時間も並ぶくらいなら、『揚州酒家』で北京ダックのセットメニューを食べた方がどんなに幸せなことだろう。
北京ダックのこういう食べ方を実際に経験することはとても価値のあることだ。
ところで、『揚州酒家』の北京ダックのセットメニューは安すぎる。こんな値段で客に２時間も粘られたら商売あがったりだろう。長居するなら、１、２品なにかつまみを注文してあげてもいいんじゃないだろうか。
北京ダックはもっと身近になっていいと思う。『北京ダックは皮だけを食べたら残りは全部捨ててしまう贅沢な料理なんだ』などと的外れな蘊蓄をたれるオヤジを発見したら、「それは間違っております」と注意してやりたいものだ。そうしないといつまでたっても、日本人は中国人に笑われ続けることになるだろう。「日本人は、ものの食べ方を知らない」と。