一流と呼ばれたい料理店では、魚翅の質と”もどし”そして味付けに心血を注ぐ。厳選された魚翅と味付けの基本となる上質の上湯（だし）は、そのまま店の看板にもなる。
よく、「ある店が旨いかどうか知るには炒飯を食べてみれば良い」と言われる。だが、私ならこういう。「ある店が旨いかどうか知るにはフカヒレの姿煮を食べてみれば良い」と。
どんな魚翅が使われているのか？硬すぎないか？軟らかすぎないか？化学調味料で味を誤魔化していないか？
中国料理店の看板である『魚翅の姿煮』には、その店の顔である上湯が使われる。それが美味しくないのであるなら、どの料理を食べても同じことだろう。

• 天九翅
• 頂裙翅
• 裙翅
• 鮑翅
• 散翅

これらの魚翅がどんなものかといいますと、

1. 天九翅：
   食べたことがありませんので説明できません。
   
   
2. 頂裙翅：
   太さが茹でたマ・マースパゲティー位。客に出されるときは、魚翅の繊維が一本一本、丁寧に並べられて盛られてきます。扇子のような形をしていないんです。長さは１２〜３ｃｍくらい。食べるとプリプリと口の中で弾けて、舌が踊りだします。美味しいですが、値段もかなりします。
   
   
3. 裙翅：
   太さが茹でる前のマ・マースパゲティー位。客に出されるときは、無造作に盛られてきます。ちょうどざるそばみたいな感じでしょうか。食感は頂裙翅よりもあきらかに劣ります。 値段も頂裙翅とそんなに変わらないので、どうせなら、頂裙翅をお勧めします。
   
   
4. 鮑翅/排翅：
   日本の中国料理店で『フカヒレの姿煮』といった場合、大抵、鮑翅がでてきます。パイナップルの輪切りを３等分したみたいな形といえばいいでしょうか。見た目はきれいだけれど、＜魚翅の世界＞では等級の低いものです。
   大きなものなら食感もいいかもしれないが、小さいもはもうなんだかわかりません。最近では注文することもなくなりました。
   
   
5. 散翅：
   ひょろひょろとした糸くずのような感じ。春雨と見まがうかのよう。散翅は、姿煮に使われることはなく、いわゆるフカヒレスープの具として申し訳程度に泳いでいたりします。また、肉饅の具に使われたり、アイスクリームの具にも使われたりもします。
   ただし、香港の高級料理店で出てくる蟹黄大散翅（蟹みそと散翅の和えもの）は、別格です。とても美味しいけれど、値段も別格です。
   

以前、長安道の重慶飯店別館でのコース料理にでてきたフカヒレスープには、散翅ではなく、鮑翅をちぎったものがたっぷり入っていいました。太っ腹なことをするものです。フカヒレスープらしくって、得した気分になりました。

中国料理店のメニューで日本語の部分だけをみると、単に「フカヒレの姿煮」という表記される料理でも、漢字表記では「紅燒魚翅」「紅燒（大）鮑翅」「紅燒（大）裙翅」「紅燒頂裙翅」というようになっていますので、使われている魚翅のグレードを知ることができます。
ただし、横濱中華街ではほとんどの店で「紅燒魚翅」、「紅燒（大）鮑翅」または「紅燒（大）排翅」という表記が使われており、使用される魚翅も鮑翅（排翅）です。
もし、「紅燒頂裙翅」「紅燒天九翅」を希望するのであれば、それなりの店で予約することになります。もちろん値段の方も相当な金額になりますので、懐具合のよいときに注文しましょう。