とてもよく見聞することのひとつに、『日本の中国料理店には、本場で食べられるような料理がない』と嘆くものがある。いつも不思議に思うのだが、そんなことを言うひとのうちで、いったいどれだけのひとが”本場で食べられるような料理を出させる努力をした”というのだろうか？

予約もなしに、突然店を訪れ、席に座ってメニューをみても目的の料理が載っていない。たったそれだけの理由で嘆いてどうするというのだ。そこで終わらせていては何も始まらないではないか。どうして、”ないものは問合わせる”という、あまりにも単純な次のステップを踏まないのだろうか？

今回の宴会では、香港での”ちょっとだけ”贅沢な晩ご飯的な御惣菜料理を出してもらった。香港の廣東料理店なら当たり前のように食べられる料理であるが、日本ではどういうわけかメニューに載っていなかったりする。
メニューになければ出させればいいのだ。ついでに『味付けは、中国人向けにしてください』とのひとことを添えれば、かなり本場の味付けに近いものをだしてくれることだろう。

• 場 所：樂園
  
• 日 時：１９９８年５月３０日（土）午後２時００分〜
  
• 参加人数：１０名
  
• 予 算：ひとり５，０００円（税別）
  
• リクエスト：「廣東の家庭料理をだしてください」「化学調味料を使わないこと」「味付けは中国人向けにすること」の３点
  

1.白灼牛肚	2.韮王瑶柱荳腐羹	3.炒田鷄	4.鹹魚蒸肉餅

• １．白灼牛肚（茹でたハチノスのネギ生姜和え）
  《楽園》名物の一品を、前菜として出してもらった。ネギと香菜の一部に化学調味料の顆粒が乗っている。コックさんが躊躇して「やっぱり使わないと物足りないだろう」ということで最後に一振りしてしまったのか？いきなりの約束違反だが、この一品が優れているので許してあげることにした。
  
  
• ２．韮王瑶柱荳腐羹（黄韮と干貝柱と荳腐のとろみスープ）
  おもいっきり干貝柱のダシがきいた具沢山のスープ。ときどき、干貝柱が生臭さくなっているものに出くわすが、この店のスープは上出来。満足できる一品。
  
  
• ３．炒田鷄（カエルと野菜の豆[豆支]炒め）
  以前にも食べたことのある料理なのでやや新味に欠くこととなった。しかし、薄塩味系の料理が多い中での豆[豆支]による味付けは、メリハリとなって効果的であった。
  
  
• ４．鹹魚蒸肉餅（中国風豚肉の蒸しハンバーグ・塩漬け醗酵魚のせ）
  香港中環の陸羽茶室の名品に挑戦してもらった。さすがに陸羽茶室ように鹹魚の切り身がドーンと乗ってはいなくて、解したものを散らしてあった。肉はやや厚手でもったりとした感じであるが、日本でこれだけのものが食べられるのは幸せなことである。中国醤油さえ香りの良いものが使われていれば、そのまんま香港での晩ご飯の再現である。これだけで、この日の宴会に来た価値があるというものだ。拍手を送りたい。
  
  

5.椒絲腐乳通菜	6.蝦醤砕炸鷄	7.鰻の蒸し物	8.清蒸魚

• ５．椒絲腐乳通菜
  私が香港で食事をするときに注文する野菜料理の６割方は、コレである。やや、腐乳の量が足りないのは残念。この次は、辛味のある腐乳を使ってもらおうかと思っている。
  
  
• ６．蝦醤砕炸鷄（揚げ鷄蝦味噌風味）
  香港灣仔の醉湖海鮮酒家の名物の一つに挑戦してもらった。お店からは「これは作ったことがない」と難色を示されてしまったが、無理を言って作ってもらった。
  結果は大ハズレで、期待していたものと全く違うものがでてしまい。肩透かしを食らってしまった。これは、私の説明不足が原因で店に何ら落ち度があるわけではない。しかし、蝦味噌風味の鷄のテンプラだと思えば、それなりに美味しいものだ。
  ちなみに、やはり醉湖名物の蝦子生根荳腐 （湯葉と荳腐煮込み蝦子風味）もリクエストしたが、材料が調達できなかったために今回は食べることができなかった。
  
  
• ７．鰻の蒸し物
  鰻をぶつ切りにして甘辛い味付けで蒸しあげたもの。鰻の煮込みは脂がきつくて苦手であるが、蒸したものなら大丈夫だろうと思い、お店の推薦に従った。
  さすがに、脂はやはりキツく「私は中国料理の鰻は苦手」という認識を新たにした。しかしながら、こういった日本人向けではないと思われる料理を食べさせてくれたお店の厚意には感謝したい。こういった料理を出すようにリクエストしたのだから。
  なお、写真の右端に写っている尖ったようなものは、ウナギの顔である。
  
  
• ８．清蒸魚
  《樂園》の清蒸魚は、その蒸し加減の絶妙さと味において香港の一流店と比肩しうるものだ。最近の高級店での清蒸魚は、金華火腿を散らしたりと余計なことをしてくれるが、この店ではネギと香菜だけが乗っている。シンプルなだけに味の誤魔化しができない。
  
  

9.芝麻球	10.海鮮湯河粉	11.鮮果併盆

• ９．芝麻球（揚げ胡麻団子）
  デザートに力を入れられない事情（人手が足りない）がある《樂園》唯一の自家製デザート。揚げたての胡麻団子というのは美味しいものだ。食べるとなんとなく、お惣菜のニオイがする。想像を巡らせたところ「料理の油を共用しているに違いない」との結論に至った。まあ、御愛敬というもんだ。
  
  
• １０．海鮮湯河粉（海鮮入り中華風きし麪の汁そば）
  写真では、ただの野菜のテンコ盛りであるが、実は河粉というきし麪のような麪を使った汁ソバである。この汁が塩味系で、さっぱりとしていて旨いのなんの。コースの締めに相応しい、嬉しくなってしまう一品。
  ところで、中華街で宴会をするとデザートのあとに料理がでてくることが往々にしてある。なぜだろう。中華街の七不思議である。気をつけて欲しいものだ。
  なお、コース料理はリクエストしないと最後は炒飯というのが常。たまにはこういうのもいいだろう。返す返す、旨い。
  
  
• １１．鮮果併盆
  ネーブルといちごの盛り合わせ。いちごが少し硬かったなあ。まあいいや。
  
  

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