中国料理で秋といえば，上海蟹の季節。今回はその上海蟹をいろいろな形で食べてみようという宴会です。会場は，私にとってはいつもの《大珍樓新館》です。他にも美味しい店はあるのかもしれませんが，”なじみの店である”というのは，いろいろと都合がいいことが沢山あります。

中国料理に限らず美味しいものを食べるコツのひとつに，”同じ店に通う”というのがあります。同じ店に通うことで味もサービスもだんだんとよくなります。ただし，いつも緊張関係を保つこと。美味しくなかったり，工夫したり改善するべき点に気が付いたらいつでも意見が言えるような関係でいたいものです。
馴れ合いだけの常連客では，店のプラスにはなりません。店全体がよくなるような意見がだせる客になりたいものです。

• 場 所：大珍樓新館
  
• 日 時：１９９８年１０月２４日（土）午後３時００分〜
  
• 参加人数：１２名
  
• 予 算：特別価格のため公開できません
  
• リクエスト：上海蟹！
  

1.柿[中/皿]鮮沙律	2.酒醉大閘蟹	3.清燉大閘蟹	4.清燉大閘蟹

• １．柿[中/皿]鮮沙律
  柿を器にして，蝦・柿・干葡萄をマヨネーズで和えたサラダ。中国料理でマヨネーズを使うとなんでも美味しく感じてしまうので，私は，どちらかというとその使用には否定的。最近，マヨネーズを使う中国料理が増えてきています。あまり多用されるようだと，味に個性がなくなるので気をつけてほしいものです。
  
  
• ２．酒醉大閘蟹
  上海蟹の老酒漬け。２日間漬け込んだだけのもの。何週間も漬け込んで熟成させたものとはまた違う美味さ。寧ろ，熟成したトロミ感や強烈な酒の香りを感じない分，だれでも美味いと感じることだろう。素晴らしい一品である。
  
  
• ３−４．清燉大閘蟹
  上海蟹・陳皮・龍眼・生姜をダシ使った二重蒸しスープ。これまた，凄すぎる一品。蟹の旨み・陳皮の香り・龍眼の甘み・老酒の甘みと香り全てが渾然一体となる。「美味い」というよりも「凄い」と表現したほど。芸術的な域に達していると言ってもいいです。
  
  廣東料理店，特に高級店で供される二重蒸しスープは，ともすれば「ビーフコンソメではないか？」と思わせるほど深い甘みと旨みとコクを醸し出す。このスープも同様である。このスープを《富臨飯店》とか《福臨門》のものだと偽ってだして「違う！」と答えられるひとがどれだけいることだろう。それ程のレヴェルのものが提供されたということだ。
  
  こういう料理はメニューに載っていない。必ず，予約してお店のひとと相談の上でメニューを決めて欲しい。そういった手続きを疎ましく思うひとは，このようなスープを楽しむことなど生涯できないだろう。
  

5.吊燒明水鴨	6.松茸炒牛柳	7.清蒸大閘蟹	8.清蒸大閘蟹

• ５．吊燒明水鴨
  家鴨の燒きもの。おフランス産の家鴨なんだそうだ。肉の味が濃くて美味。皮の部分の燒けたところの香りが最高。
  
  
• ６．松茸炒牛柳
  松茸と牛フィレ肉の炒め物。韓国産・北朝鮮産の松茸は香りがないと聞いているけれど，この料理に使われているものは，結構いい香りがする。日本で売るときに松茸に香料をかけているとも聞く。真偽の程は確かではないけれど，松茸のよい香りがしたことは確かである。牛肉は老酒に漬け込んだものだそうだ。
  なかなかに美味しかったけれど他の料理が凄すぎたので霞んでしまった。ちょっと可哀相な立場の料理である。
  
  
• ７-８．清蒸大閘蟹
  上海蟹の蒸し物。２００ｇ級の日本では最大クラスのもの。私には雌が供された。上海蟹は雌が人気だけれど，実際は雄も美味いものだ。好みにもよるけれど，私はそれぞれに良さを持っていると思う。
  蟹からは，卵が溢れている。甲羅をひらくと中には黄金が入っていた。甲羅の裏に貼りつく卵を食べ，紹興酒を注いでの甲羅酒。酔狂である。蟹の脚の付け根のヒダヒダ（ガニ）を丁寧に毟り取って，思い切りしゃぶりつく。栗を思わせるホクホク感が堪らない。上海蟹には申しわけないが，蟹の身を食べるのはなんとなく消化試合的な感じがしないでもない。
  
  

9.蟹粉小籠包	10.菰類鷄炒飯	11.西米[火局]布甸	12.甜點心●盆

• ９．蟹粉小籠包
  上海蟹の蟹味噌を使った小籠包である。火傷覚悟であつあつを頬張る。中のスープは一滴も逃すことができないから。口のなかでひろがるスープは，一瞬のうちに胃袋の彼方へ消えた。”もう一個食べたい”と思ったが，ひとりひとつしかないのだ。
  この蟹粉小籠包だけを，２０個くらい食べたらどれほど幸せなことだろう。
  
  
• １０．菰類鷄炒飯
  キノコと鷄の炒飯。碗一杯のやや味の濃い目の炒飯。釜飯っぽい美味さ。
  
  
• １１．西米[火局]布甸
  タピオカの燒プディング。ちょっと私には甘すぎ。
  
  
• １２．甜點心●盆
  菓子盛り合わせ。南瓜饅頭・パイ・ココナッツ団子・カスタード春巻（栗入り）。カスタード春巻は，意外に日本ではメニューに載っていない一品。美味しいぞー！
  
  

13.荳腐花

• １３．荳腐花
  本当はコースは１０品で終了なのだが，「今月は荳腐花をやっている」ということで，急遽荳腐花の登場となった。荳腐花にかけるシロップは「金木犀」と「ハチミツ」。金木犀のシロップ，昨年とは違うもので「塩漬け」のものを使ってみたんだそうだ。これだけを舐めてみたらそれなりに美味しいものだが，荳腐花にかけてみたところ，正直言って旨くなかった。今期はハチミツか醤油がいいだろう。
  
  
  

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