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中国料理人の勢津榮興氏は，「横浜マイスター」の称号を横浜市から授与されている。その「横浜マイスター」というものがいったい何ものなのかは定かではないが，永年職人として真摯に料理と取り組んできた結果であることには違いはない。今回は，その勢津氏の店である接筵での宴会記録である。
思えば，この店での宴会への道のりは実に長いものでした。
第一幕
山下公園近くの横浜メルパルク（郵便貯金会館）に杏樹という中国料理店がある。ある日，散歩がてらこの店の前を通ったところ，
「上湯燕皮」というその日のおすすめメニューがあった。「この店のコックさんは，福建料理の心得があるに違いない」と思い，
後日，杏樹にでかけた。
ところが，訪れた日には「上湯燕皮」はなかった。メニューにも福建料理は見当たらなかった。ちょっと残念だったが，折角なので獅子頭などを食べていた。すると，「上湯燕皮」が運ばれてきたではないか！マネージャーが厨房にリクエストを打診してくれていたのだ。嬉しかった。
もっと驚いたのは，「総料理長からご挨拶が…」といって現われたのが勢津榮興氏だったのである。ＴＶで観るひとが私のテーブルに挨拶に来たのだ。本当に驚きました。
このときは，勢津氏に福建料理に惹かれていることをお話して，きっと接筵で宴会をするつもりだということをお伝えしました。
かれこれ，２年前の話である。
第ニ幕
中華街大通りの肉まん屋さん「江戸清」さんのＨＰに，勢津榮興氏に質問できるコーナーがあった。ここで，福建料理についての質問をしたところ，佛跳牆ができるとの回答がありました。これが半年くらい前。
第三幕
雑誌Hanakoは，毎年ＧＷ前に横浜中華街の特集を組む。２００１年の特集で，接筵の佛跳牆が紹介されたのだ。『Hanakoに先を越されたぁ！』別に競っているわけじゃないんだけどね。いてもたってもいられなくなって，接筵に予約に行ってしまいました。まだだれも誘っていないのにね。仲間にメールを送ったら一瞬で集まりました。
で，やっとのことで接筵で宴会の運びとなりました。
全体的にショッパイという印象をもちましが，そんなことは好みを伝えない客が悪いのであって問題ではありません。次回の宴会時に好みを伝えることでいくらでも改善できることです。
それよりもだされた料理の内容を見て感じるところがあります。それは，『客に喜んでもらおう』『客の要望に応えよう』としているのがよく伝わってくるとともに，『接筵ではこういう料理もだせるんです』という主張までもが料理を通して伝わってくるのです。
手の込んだ前菜から我々の心をつかんでしまいました。蟹爪や伊勢海老料理は，中国料理を食べ歩くのが好きな我々にとっては，食べ慣れた新味に欠く料理になってしまいますが，普通なら大変なご馳走料理にほかなりません。
さらに上ミノの炒めという内臓系で楽しませたと思いきや，福建海苔の料理で我々を唸らせ，超高級魚の蒸し物で我々を驚かせる。最後にいままで食べたこともないような杏仁荳腐で物議を醸す。
初めての客に対して，これほどの起伏に富んだ料理で宴会コースを設定するのは，自信の現われであるとともに冒険でもあるといえます。
今回，接筵では予想を遥かに越える内容で大変興味深い宴会となりました。今後もどんな料理で我々を驚かせてくれるのか楽しみでもあります。