點飯樓は，知人が勤務先すぐ近くに発見した店。東京原宿の明治通り（原宿から渋谷方面に向う側）沿いにあるビルの地下一階にある。平素は，「食べ放題」の看板をかかげていることもあって，「食べ放題に美味いものなし」を座右の銘とするひとは，まず見向きもしない。おまけにビルの地下一階は悪い意味で昭和４０年代のまま時間が停止した雰囲気で殺風景だ。おしゃれなブティックが建ち並ぶこの界隈にはどうみても似つかわしくない印象を与える。

店舗は，一目見れば「店の主人にはやりたいことがある」のが感じてとれる。おそらく，「本当は廣東の郷土料理をやりたい」のだろうということ。そして，「意に反して，お客は飲茶の食べ放題と汁そばエビチリ酢豚に炒飯ばかり注文するのでそのギャップに悩んでいる」のだろう。メニューの中に他の中国料理店にはないシブイ料理がちらほらしている。しかし，こんなシブイ料理を注文する客など皆無に等しいに違いない。

今回は，その知人（横濱中華街・天龍菜館のファンでもある）が設定してくれた宴会である。既に何度か宴会を開いており，店の主人も「この客は他とは違う」ことを既に理解しているようだ。運悪くこの日の宴会は，当の主人が不在なため，いろいろと芳しくない点があった。しかし，このような問題はすぐに改善できることばかりなので，大した問題ではない。

點飯樓は，近い将来，必ず「我々側」の店になるだろう。そのためには，何度も宴会を繰り返して，問題点・改善点を指摘しなくてはならない。時間もお金もけっこうかかるに違いない。しかし，こういう店を見つけたら，客がその店のいいところを引っ張り出してやらないと店は育たないのである。

多くのひとの手によって，鍛え上げられることを希望してやまない店だ。将来が楽しみである。

五味鹵味盆	油泡象抜蚌	[豆支]汁蒸[魚倉]魚	港式蝦醤鷄	鹹魚蒸肉餅

• 五味鹵味盆
  叉燒・内臓・皮蛋・腸詰の前菜である。この店の箸袋に「塩叉焼」なるものが印刷されていて，これがその塩叉焼だろう。香辛料や蜜汁を塗っていないタイプである。美味いです。
  
• 油泡象抜蚌
  ミル貝・きのこ類・野菜の炒め物。あまりパッとしない。
• [豆支]汁蒸[魚倉]魚
  マナガツオを豆[豆支]で蒸したもの。ちょっと冷めただけで，マナガツオの生臭さがでてしまう。他の魚でやってもらった方がもっと食べやすい。コチとかカサゴなんてどうだろう？
• 港式蝦醤鷄
  港式とは，香港式のこと。大昔に（今もあるかも）あった，鼻炎薬「ミナト式ロケイ」の港式のことではない。ちなみに「日式」は日本式のことだ。
  話しが横道にそれたが，蝦醤に漬け込んで揚げた鷄である。香港灣仔の醉湖海鮮酒家の名物にも同じ料理がある。この日は，蝦醤の風味が足りないようだったが普段はもっと風味が強いんだそうだ。なかなかに美味いのだが，マヨネーズは不要である。
  
• 鹹魚蒸肉餅
  鹹魚（塩漬け腐れ魚）を豚肉ハンバーグに載せて蒸したもの。ご飯のお供最強の一品。実は，この店は鹹魚は用意していないんだそうだ。知人が予約の折り，「ビン詰めではない鹹魚を持ってくるから，それを調理してくれ」と伝えたところ，ご主人曰く「そう来ると思っていたから仕入れておいた」とのことだ。
  これだけでも，店と知人との間に信頼関係が成立していることを知ることができる。特に中国料理店で美味しい思いをしたければ，信頼関係を築かなければどうにもならないのだ。
  このあたりのことを良く理解しているひととそうでないひとでは，食べるものに雲泥の違いがでることもある。客はどうころんでも平等な扱いなど受けないのである。
  

冬瓜湯	郊外蔬菜	鴛鴦冷麪	蝦子撈麪	蝦子荳腐	杏仁荳腐・西米露

• 冬瓜湯
  夏らしい冬瓜を使ったスープ剥き蝦入り。基本は，業務用中華ダシ。これに店独自で作ったスープを加えているように思われる。化学調味料が味を支配していて，少々ゲンナリだ。
  しかし，こんなことは改善させればいい。普段は，こういうダシを使っていても，自分たちが予約する宴会のときはちゃんとしたダシを使うようにさせればいいことである。そういう「特別な扱いを受ける客」になるまで，それなりの時間もお金もかかるものだ。
  
• 郊外蔬菜
  芥蘭のオイスターソースかけ。折角の芥蘭が茹で過ぎで，ヘンなトロミとエグミがでている。これも改善させればいいだろう。
  
• 鴛鴦冷麪
  玉子麪と翡翠麪の汁そば（冷麪）。スープがスーパーで売っている「玉子荳腐」のダシ汁そっくり。強烈に不味い。
  
• 蝦子撈麪
  追加注文した。蝦の玉子を汁なしそばに和えたものに郊外蔬菜が付く。麪がカリカリに燒かれたものに蝦子がかけてある。バサバサして喉を通らない。麪も油クサクなっている。もっと工夫してもらわないと。
  
• 蝦子荳腐
  これも追加注文。蝦子シリーズ第二弾。実は，この店には蝦子はなかったのだが，知人が仕入れさせてしまったので，消費してあげるのである。
  この日にいたコックさんは，蝦子荳腐を初めて作ったとのことだ。塩気が強く，化学調味料が多過ぎたという点を除けば，上場の出来。少し工夫すれば，すぐにでもランチタイムのお客さんに出せるだろう。
  
• 杏仁荳腐・西米露
  杏仁荳腐：まるで美味しくない。多分，業務用の杏仁豆腐。いまどき，これほどの不味いものは手に入らない。
  西米露：これは追加注文した。ココナッツスープにタピオカが入っている。妙に油が酸化したニオイがするココナッツである。これも美味しくない。
  予約客のデザートくらいは，もう少し工夫してもらいたいところだ。で，どうするかといえば，予約するときに「なにかいつもと違うもの」をリクエストすればいいだけだ。希望があるのなら伝えることだ。黙っていてはお店って何もやってくれないからね。言い換えれば，希望を伝えれば何かやってくれるということ。このあたりの事情を押さえておくと，大抵の店で通用するから覚えておいて損はないと思います。
  

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LAST MODIFIED 19/Aug/2000 MAINTAINED BY T.K.

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