大珍樓新館が大珍皇宮御膳房と店名を改め、「満漢全席もできる廣東料理店」として
リニューアルオープンしたので、早速友人を集めて満漢全席を開催してみました。

2000年に中国広東省にある老舗・廣州酒家が所蔵する満漢全席のメニューを
２日間かけて再現してもらったことがあります。このときのメニューをみると、
満州族の料理と思えるものはあまりなく、漢民族それも南方の廣東の宴席料理が
主流を占めていました。これに、熊の掌・駱駝のコブといった珍しい食材の料理が
加えられていました。また、西洋的な名称の料理もあり、欧米列強の圧力が強まった
清朝も後期の宴席ではないかと思われます。

改めて大珍樓新館での新満漢全席のメニューをみてみると、この廣州酒家の所蔵の
メニューをベースに一回の宴席で収まるように再構築したものだということがみ
てとれます。この再構築の部分が、廣東料理店である大珍樓が提供する【新】満漢全席
とする所以なのでしょう。

美味しかった！凄かった！そして、随分と贅沢をしてしまいました。

ただ、あまりにも贅沢過ぎて、「来月またやろうぜ！」という気持ちにはならない。
それは私が質実を重んじる傾向が強いからだけではないように思います。

そこで、今の時代、満漢全席を開催する動機というものを考えてみました。

◆一生に一度あるかないかというくらいハレの日。たとえば、ノーベル賞を
受賞したとか宝くじで３億円当たったとか･･･
◆企業の接待。それも、余程カネがあり余っている会社の接待。
◆好事家や酔狂なひとの集まり･･･

他には思いつかないなあ。

横濱中華街にやってくるお客さんが食事にかける費用は、
ひとり３千円を割り込んでいると聞いています。そういう
人たちがフリでやってきて満漢全席という選択肢はありえない。

また、「中華街で予算１万円くらいで美味しいものを食べようぜ！」
という場面においても、満漢全席という選択肢はまずありません。
そのくらい、ハードルが高い。あまりにも高い。

さらに、満漢全席は１回行けば十分だと思わせるほど贅沢な内容
なので、折角来てもらった客をリピーターにしにくい構造になっています。

大珍皇宮御膳房（大珍樓新館）は、非常に難しいところをターゲット
にしているように思います。常に新規顧客、それも思いっきり金回りの
いい顧客の開拓を続けなければなりません。

私はよく大珍樓で宴会を開催するのですが、満漢全席よりも、これまでに報告
したものの方がずっと魅力的に思います。何よりも季節感があるしテーマ性
があるので、次回が楽しみになる。つまりリピーターとなるわけです。

たとえば、これ。

《農暦新年會》
《傳統粤菜（伝統的廣東料理）宴》
《潮州菜宴》
《大閘蟹全席（上海蟹大宴）》

これほどの内容のものをだしている店など、日本で他にないと思います。
高級化路線を進むのなら、こちらの方が余程集客しやすいと思うけどなあ。